医療法人小塙医院 院長 小塙清先生に大豆イソフラボンと妊娠しやすい体づくりの関係についてお話を聞きました。
医療法人小塙医院 院長 小塙清先生
当医院は、茨城県小美玉市にあるのですが、地方なので結婚は早いか遅いかに別れる傾向があります。そのため、20歳で結婚し2年くらい子供ができず来院する20代前半から45歳までと年齢は幅広いですね。 ただし、10年前までは、32~35歳の年齢層が一番多かったのですが、最近は地方でも晩婚化が進んでいるのか、35~38歳で初診という方も珍しくなくなってきました。 そして、当院に訪れる40%の患者さんが、婦人科を受診することも初めてという方です。
不妊に悩む女性の年齢はさまざまですが、その原因もまた多岐にわたります。精神的なものから、本当に千差万別いろいろあります。したがって、状況をきちんと整理し絞り込んで、体外受精が必要か判断する必要があると考えています。 しかし、最近の治療では、最初から体外受精を行う傾向が高まってきています。この流れは、特に都心で顕著に見られます。今から20年前は、おっしゃるように体外受精は最後の手段で、タイミング法や人工授精などの一般不妊治療を経て、最後に行う治療でした。 そのため、最初から体外受精を行う治療は批判されることもありました。 ところが最近は、初診の年齢が上がっていることもあり、一般不妊治療に時間がかかりそうだと見込まれたときは、いたずらに時間をかけずに、体外受精を第一選択とすることが多くなっています。 今は、不妊治療に関わらず、世の中の流れとして、急いで結果を求める傾向にあり、患者さんからのニーズも非常に高いです。 もちろん、医師から勧めるケースもありますが、患者さんから「体外受精を早くやって欲しい」と求められることがとても増えています。 そして、地方でも都心から2~3年遅れて、その傾向が強まっている印象がありますね。
私も、サプリメントを信仰しているわけではありませんが、ある程度データがそろっていて、実績が伴っているものはよいと思っています。 確かに、サプリメントに関しては歴史も浅いし、試験がきちんとなされていないものが大多数ですが、そういう意味では、今使っているニチモウバイオティックス社のイソフラボンは、何点か今後期待できる点があり、使用することにしました。
大豆イソフラボンは植物性のポリフェノールの一種で、女性ホルモンのエストロゲンによく似た分子構造を持っています。そして、体内でもエストロゲンと似た働きをすることから、別名植物性エストロゲンとも言われています。 しかし、ひと言で大豆イソフラボンといっても、実はその種類、効果はさまざまです。 どれも同様の効果があるとは限りません。私が患者さんにおすすめしているのは、アグリコン型大豆イソフラボンのサプリメントです。 通常、豆乳や納豆に含まれるイソフラボンは、グリコシド型といわれ、糖がついており、分子量が大きいままでは吸収されず、腸内細菌で分解されてはじめて吸収されます。 一方、アグリコン型は糖がない分、分子量が小さく体内に効率よく吸収されます。加えて、私が取り扱っているイソフラボンは、大豆の中でも胚芽のみを使用し、麹菌で発酵していること、そしてアグリコン型イソフラボンの中でも抗酸化作用が非常に強いというのが大きな特徴となります。
実は、イソフラボンには、妊娠・着床のための必須成分である白血病阻害因子(LIF)とトランスフォーミング成長因子β(TGF-β)を分泌する力を高める作用があること、そして、受精卵が着床する時に接着剤のような働きをするグリコデリンタンパク質が発現することが実証されています。また、イソフラボンの摂取によって、子宮への血液の流れが増えることが確認できています。 子宮の機能とは、受精卵を迎え入れて宿し、育てること。つまり、子宮内膜の環境をよくするということは、妊娠を可能にし、うまく着床するためにはとても重要だということです。 これまでの体外受精でも最後にぶつかるのが着床でした。もし、体外受精ですべてがうまくいくのであれば、その成功率は100%になりますが、いまだによくても30%の壁を破れないというのは、最終的には着床の問題があるからなのです。
そうですね、もちろん体外受精を受けている方には飲んでもらっていますが、体外受精に関わらず、タイミング法など他の治療においても、着床の問題は関わっているので使用しています。 一方、着床の問題だけでなく、不妊の原因としてあるのが、排卵障害や卵の成長に関わる成熟障害です。排卵はきちんとしていても、すべての卵が精子と結びつくような成熟した卵ができるわけではありません。未成熟のものや排卵まで至らない卵もあります。 そのような場合、原因としては女性ホルモンが足りていないケースが多いのです。 じゃ、ホルモン剤を使用して補えばよいのでは?という考え方もありますが、女性ホルモンはすべて感受性、女性ホルモンを感受するためのレセプターがあります。そのため、レセプターが先天的に少ない人や感受性が低い人などは、女性ホルモンの排卵誘発剤を与えても、卵がなかなか成熟しないことがあります。 私は、この分野に関するさまざまな文献を読み、イソフラボンがレセプターを是正させることができるかもしれないと考え、卵巣の機能障害や排卵障害の方にもイソフラボンを使用しています。
サプリメントは医薬品と違い即効性があるわけではないので、早めに飲んでもらうようにしています。 また、私が使用しているサプリメントは、1粒に20mgのイソフラボンが配合されていますので、体調管理や妊娠しやすい体作りを目的とする場合は1粒、着床障害や女性ホルモンの感受性を上げるためには、2粒の40mgにしています。
まだデータを整理しているところなのであくまでも印象ですが、イソフラボンを飲まれていない方と比較すると、妊娠率は増えていますね。 2倍、3倍に増えているということではありませんが、タイミング法、人工授精、そして体外受精のすべての治療で確実に微増しています。 このことから、LIFやTGF-βの分泌を促進するという局所的な働きだけでなく、女性ホルモン様作用や抗酸化作用など、イソフラボンのさまざまな働きが総合的に働き、体の代謝を上げているということは十分に考えられますね。
妊娠するしないに関わらず、冷え性だったのが、足元からぽかぽかしてきた、赤みが差してきた、という体感はあるようです。イソフラボンの抗酸化作用によって、血流が改善されたのかな、と推測しています。 あとは、便秘が改善してきた、というお声もありましたね。
それは同感ですね。患者さんの中には、食生活の乱れからか、鉄欠乏性貧血の女性が非常に多いです。そのような女性には、鉄と一緒にイソフラボンを摂取することを勧めています。なぜかというと、鉄分は、それだけを飲んでいたのでは便にでてしまうか、どこかに蓄積して体内に取り込まれない成分なので、ビタミンなどと一緒に飲む必要があります。イソフラボンも鉄との相性がよく、一緒に飲むことで鉄をスムーズに吸収できることがわかっていますので、身体作りのために勧めているケースもあります。 本来は、日常の生活や栄養面、そして体質を改善していくことで、自然に子供を授かった方がよいと思っています。そのため、妊娠しやすい身体づくりはとても大切だと考えています。
イソフラボンを男性に勧めているケースは、まだまだ少ないですが実際はあります。 まだ裏づけデータが取れていないため、男性不妊に対するイソフラボンの投与については賛否両論ありますが、データを蓄積し有効性が確認できれば、今後、精子の生成に関する治療に取り入れていければと思っています。
大豆の中にはたくさんの栄養成分がありますので、大豆食品を積極的に摂ることはとてもよいことだと思います。しかし、イソフラボンのように、大豆の中でも特に効能効果の高い成分を効率よく摂取するためには、サプリメントを有効に利用するのがよいと思います。 大豆食品に含まれるイソフラボンは分子量が大きく、腸内細菌で分解されてはじめて体内に吸収されます。そのため、吸収率には個人差があり、食事から摂っていても十分足りているかどうかはわかりません。一方、サプリメントの場合は、吸収しやすいよう予め分子量を小さくしているので、吸収率に個人差はありません。 実際に、患者さんからも同じような質問を受けることがありますが、その際はきちんとイソフラボンの必要性を伝えるようにしています。 「大豆の中でもイソフラボンが必要であること。その理由は、着床に不可欠なLIFの分泌をあげるため、もしくは女性ホルモンのレセプターの感受性を高めるため」など、摂取する目的を説明することで、納得して飲んでもらっています。
そうですね、まず不妊に悩む多くの女性が、残念なことに、時期を逃してしまっています。 体外受精が始まって32年が経っています。そして、その間体外受精を受ける人も100倍に増えました。施設も、3施設から、今では約1,000施設にも増えています。このことからも、この30年間で、体外受精がいかに発展を遂げてきたかがわかると思います。 では、なぜそれだけ発展してきたかというと、患者さんが多いのです。そして、なぜ多いかというと、一重に皆“遅い”のです。 晩婚化が進み、その結果子供を持とうとする時期が遅いのです。 あとは、仕事の目処がたってから作ろうとすると、できないのです。妊娠とは恐らく、作ろうと思うものではなく、自然にできるものなのだと思うのです。 あとは、自分達がいつでも子供を持っても良いと思ったら、2年くらいで作って欲しいと思います。もちろん例外もあると思いますが、3年目からは自然妊娠の数がどんどん減ってきます。共働きの夫婦であれば、年々忙しくなり、また責任も増してきますから、ますますタイミングがなくなります。 結婚年齢も高くなってきているのもありますが、やはりタイミングはとても重要だと思います。時期を逃して欲しくない、と切に願います。
そういう不安を感じていらっしゃる方は、本当にたくさんいますね。 茨城県では、福祉課が不妊相談センターを開設していて、私が責任をもって行っています。毎月センターに行き、相談を受けたり、メールでその後も相談を受けています。 そのときまず、こう質問するようにしています。 「『なぜ、あなたは妊娠できないのか?』あなた自身は、明確に原因をわかっていますか?そして、先生にはどのように言われていますか? もし分からなければ、ぜひ先生に聞いてみてください。」 このように質問すると、驚くことに9割の方が、 「わからない」もしくは 「先生がきちんと答えてくれない」または 「聞きもしなかった」といいます。 また 「どうして、体外受精を行っているのですか?」と聞いても、 「わかりません」 「あなたが希望したのですか?」と聞くと、 「いや、先生に勧められて流れで・・・」 なんて、答えが出てくることもあるのです。 つまり、ほとんどの方が自分の不妊の原因がどこにあるのか、明確にわかっていないのです。わからないまま、先生にゆだねて、言われるがまま次々と治療を行っている、そんな一方通行の治療を続けている人がとても多いという印象があります。 忙しい先生が多いため、なんとなく聞くタイミングを逃してしまい、そのままずるずるきてしまったという人もいましたが、多いにして自分の身体のことなのに、なぜか皆さん受け身なのです。 だから、まずは素朴に「なぜ、妊娠できないのか?」と聞いてみてください、とアドバイスしています。そして「自分自身で、何が原因なのか分析することが大切」と伝えています。 そうしないと、口コミや流行りのものに飛びついて、それが本当に自分にあっているのか判断できないままになってしまいます。 もちろん、分子量レベルですべての原因がわかることは難しいと思います。でも、ある程度絞って、治療をすることは可能だと思います。 そして、自分にあった治療にめぐり合うことが大切です。そうすることで、少なからず漠然とした不安は軽くなると思うのです。 今は、茨城県だけでなく、不妊相談センターを設けている県もありますので、治療を受ける前や不安なときは、1人で抱え込まず、 ぜひ利用していただきたいですね。 ※茨城県では、週2回相談コーナーを設けています。 そのうち小塙先生は、月2回担当されています。詳しくはコチラをご覧ください。