野末悦子先生に大豆イソフラボンと更年期の関係についてお話を聞きました。
野末悦子 先生
■1957年、横浜市立大学医学部を卒業。 インターン終了後、翌年東京大学医学部付属病院分院産婦人科に入局、1965年に医学博士号取得。 その後、公立学校共済組合関東中央病院産婦人科、恩師財団 母子愛育会愛育病院産婦人科に勤務。 川崎医療生活協同組合では久地診療所所長、川崎協同病院副院長、産婦人科部長として務める。 1997年、定年退職と同時に女性3人でコスモス女性クリニックを開設。以降16年にわたり女性の疾患、 健康相談にあたる。 2013年2月に同院を閉院。同年4月より川崎医療生活協同組合・介護老人保健施設「樹の丘」施設長および、初代所長を務めた久地診療所の 婦人科医として再出発し、現在に至る。 ■2000年に設立した認定NPO法人「乳房健康研究会」の副理事長として、乳がんの早期発見・早期治療をすすめるピンクリボン運動を展開。地元神奈川では「ピンクリボンかながわ」の活動にも関わる。自身の乳がん体験を生かして、定期検診や自己触診の必要性を訴えている。 ■長年にわたる母子保健事業への功績が認められ、2005年10月に母子保健功労賞、2008年11月には厚生労働大臣賞を受賞。 ■著書は「すてきな人のイキイキ更年期」(主婦の友社)などほか多数。
更年期というのは、閉経をはさんで前後10年間を指します。一般的には45歳から55歳くらいまでという方が多いようですが、個人差もありこれより長く症状を訴えられる方もおられます。この期間は女性ホルモンの一種であるエストロゲンが急激に減少し、そのためにホルモンバランスが崩れて、全身にわたるいろいろな不調が起きてきます。 長年クリニックや電話相談で更年期女性に関わってきた経験からいいますと、更年期を迎えた女性には3つのタイプがあるように思いますね。 まず第一に、更年期を受け入れてうまくつきあっていくタイプ。第二に、更年期であることを認めたくないタイプ。 第三に、更年期と聞いて必要以上に落ち込むタイプ。
もうおわかりのように、更年期をうまく乗り越える方は、第一のタイプ、つまり積極的に受け入れる姿勢の方に多いのです。 私はよく患者さんに更年期であることを認めるようおすすめしています。体の不調、心の不安、どれもひとりでは解決できない問題ばかり。 周囲の理解があれば、ずいぶん不調も和らぐものなのです。 もちろん、不調が続いたらまず専門医の診断を受け、必要な治療やアドバイスを受けることはなによりも大切です。 更年期は女性にとって人生のターニングポイント。 そのあとの人生をより素敵に生きていくためにも、この時期の過ごし方はとても大切だと思っています。
最近では、サプリメントをうまく生活に取り入れている人が多いようですね。ただし、サプリメントを利用する場合、その中身をしっかり理解してから飲んでほしいと思っています。 たとえば、大豆イソフラボン。実は「植物性エストロゲン」と呼ばれるほど、分子構造がエストロゲンに似ているんです。 女性ホルモンが不足する時期には、大豆イソフラボンは女性の味方のサプリメントというわけです。
ところで、大豆イソフラボンには『アグリコン型』と『グリコシド型』の2つのタイプがあることをご存知でしょうか。『グリコシド型」は「糖」がくっついた大きな分子で、腸内細菌の酵素で分解されないと吸収できません。一方、『アグリコン型』ははじめから糖がはずれているので、分子量も小さく、摂取してから2~3時間ほどで効率よく吸収されることが知られています。 『アグリコン型』は食品からとるのは意外と難しく、大豆イソフラボンが豊富だとして最近話題の豆乳や納豆に含まれているのは『グリコシド型』。『アグリコン型』が含まれているのは味噌と醤油ですが、たとえば、味噌で1日の必要量をとろうとしたら味噌汁を約15杯も飲まなければならず、現実的ではありませんよね。手軽に効率よく『アグリコン型イソフラボン』をとるには、サプリメントなどを上手に利用するのもよいかと思います。
更年期症状はふつう、およそ10年ほどで落ち着くといわれていますが、更年期が女性の体の大きなターニングポイントであることは間違いありません。 特に注意していただきたいのが、更年期から急激に衰えやすい骨の健康のこと。女性ホルモンの減少は骨にも関わってきますので、ほおっておくと骨密度の低下を招きやすいのです。
骨の健康のキーワードとして、私はよく「カケドマ」と言っていますが、これは、カ=カルシウム、ケ=ビタミンK、ド=ビタミンD、マ=マグネシウムのこと。骨にとって大切な栄養素のことです。 これとともに『アグリコン型イソフラボン』も骨の代謝に関わることが知られています。 更年期をはつらつと健康に過ごし、さまざまな変化を前向きにとらえ、もっと実り豊かな人生を楽しんではいかがでしょう。