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妊娠しやすい体づくりとイソフラボン(パート2)

医療法人小塙医院 院長 小塙清先生に大豆イソフラボンと妊娠しやすい体づくりの関係についてお話を聞きました。

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医療法人小塙医院 院長 小塙清先生
以前にもこの「イソフラボン倶楽部」で、妊娠しやすい体づくりとイソフラボンの関係について話してくださった医療法人小塙医院院長の小塙清先生。当時から5年がたった今、新たにわかってきた事実や医療業界に起きている変化など、みんなが知りたい疑問や不安についてあらためて聞いてきました。

▼前回のインタビューはこちらから▼
https://isoflavone.jp/interview/dr-interview-4/

「年齢制限なし」の不妊治療から見えたこと

――5年前のインタビューでは20代~40代まで幅広い年齢層の方が来院されているとのことでした。また30代後半で初診の方も多いというお話でしたが、その後も変化はありませんか?

小塙清先生(以下、小塙):まず年齢層はさらに幅広くなって、今では20歳から50歳くらいの方にまでお越しいただいています。
治療が難しくなるので43歳以上は診ません、というクリニックも多いのですが、当院では更年期に入っていなくて、卵子がつくられていることが確認できれば年齢制限は設けていません。それもあって、多くの方にお越しいただいているのかもしれません。
30代後半の方の初診は、ますます増えていますね。うちに来てくださる初診の患者さんの年齢は37~42歳ですから、そのくらいの年齢の方が一番多いと思います。

――50歳以上の高齢の方も含めて、来院された方すべてにホルモンチェックなどをして、妊娠の可能性が少しでもあれば治療をされるということでしょうか?

小塙:そうですね。もちろん、かなりのリスクがあるということはお伝えしますよ。
具体的には、流産、奇形、妊娠合併症などですね。「相当の覚悟をしてください」と正直にお伝えしています。

高齢で出産経験のない方の来院も多いのですが、統計上50歳以上で出産経験のない方が妊娠に成功したケースは、実はありません。そういった厳しい現実も含め、来院してくださった方にはいつわらずお伝えしています。

卵子は赤ちゃんとしてお母さんのおなかの中にいるときから、その人の体内にできています。そう考えると、50歳の人なら50年のあいだ、卵子も年を重ねていくわけです。妊娠が難しくなるのも、無理はないですよね。

若々しくて美しい女性は、妊娠しやすい?!

――ところで話は変わりますが、今は40代でもとても若々しい人が多いと思うのですが、見た目の若々しさと妊娠率には何か関係がありますでしょうか?

小塙:残念ながら、医学的には、見た目の若さと卵巣年齢には関係がありません。
ただ、美容やおしゃれに凝って若々しくいることでパートナーから女性として大切に扱われるようになると、結果的に妊娠の成功率が上がるということはありますね。

女性は男性から大切にされたり、きれいなものを身につけたりして気分がよくなると排卵の調子がよくなるというデータもあります。排卵を促すホルモンは脳下垂体から出ているのですが、気分がよくなるとこの部分が刺激されるので、卵巣との連携が円滑になるんです。
そういう意味では、若々しい外見は妊娠のしやすさに貢献しているとも言えるかもしれませんね。

不妊治療中は気分が落ち込みがちになる人も多いですが、それでは脳下垂体のはたらきが悪くなって妊娠の成功率も下がってしまいますし、健康全般のことを考えても悪影響です。うまく気分転換していつも明るい気持ちでいることが大切です。

――女性は本当に、精神的な部分が大事ですもんね。
少し話が変わりますが、体外受精について教えてください。前回のインタビューでは、結果を早く求める傾向が強くなっていることや患者さんの高年齢化などもあり、体外受精に対する抵抗感が薄くなってきているとおっしゃっていましたが、今も変わりない感じでしょうか?

小塙:「体外受精」という言葉じたいはニュースなどでも頻繁にとりあげられていますし、ほとんどの人が知っていますよね。おっしゃる通り、ひと昔前に比べると体外受精を受けることへの抵抗感は薄くなってきていると思います。

以前はタイミングで妊娠できなければ人工受精を試し、それでダメなら体外受精というルートが一般的でした。ところが今では、タイミングで2~3回試して結果が出なければ「体外受精を試してみたらどう?」という話をすることが多くなりましたね。
医師からすすめられるまでもなく、患者さんのほうから「体外受精をしてください」と言われることもたくさんあります。

イソフラボンと妊娠の関係に見られる変化とは

――小塙先生のクリニックでは、イソフラボンのサプリメントを取り扱っていらっしゃいますね。使用量も月に100箱以上とかなりの数ですが、イソフラボンが妊娠率アップをサポートしていることを実感されることはありますか?

小塙:女性ホルモンのバランスが悪く、排卵がうまくいかない場合は、排卵誘発剤を用いて排卵を促す治療を行います。
このときイソフラボンを日常的に摂って女性ホルモンの基礎値を高めている人のほうが、治療薬の反応がいいんですよね。

「女性ホルモンが足りないなら、エストロゲンなどの高濃度のホルモンをどんどん投与すればいいじゃない」と思われるかもしれません。しかしエストロゲンなどのホルモン剤には、乳がんになりやすくなるなどの副作用もあるんです。
長期的に使うのには、自然の成分で女性ホルモンのバランスを整えることができるイソフラボンが最適だと考えています。

――なるほど、イソフラボンは、身体にやさしく女性ホルモンのバランスをとってくれるんですね。

イソフラボンはどんなふうに妊娠をサポートしているの?

――イソフラボンが女性ホルモンのバランスを整えるメカニズムって、どんなものなんでしょうか?

小塙:そうですね。先ほどエストロゲンなどの女性ホルモンの投与のお話をしましたが、このホルモンのレセプター(受容体)の感受性は人によって全然違うんです。これは高ければいいとも一概に言えなくて、あまりに高すぎても乳がんなどの危険性が高まります。

その点イソフラボンは高すぎることも低すぎることもなく、このレセプターの感受性を保ってくれます。この感受性は同じ人でも体調によって変動があり、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の人は不安定になりがちです。そういう方もイソフラボンを摂ることで適正な値を保ちやすくなりますので、おすすめしていますね。これと並行して、食生活や生活習慣の改善も指導させていただいています。

――先生はイソフラボンと着床の関与について、どのように考えられていますか?

小塙:着床というのはとても複雑な現象で、あるひとつの要素だけで決まるというものではないんです。卵子ができてから着床するまでの流れを、簡単にご説明しましょう。

子宮内部には、子宮内膜という膜があります。妊娠しなければ古い子宮内膜が剥がれ落ち、新しい内膜ができます。このように生理4~5日目には、古い内膜は0になっています。

生理5日目以降は増殖期といって、新しい内膜が増えていきます。卵子もこのあいだにどんどん大きくなって、成熟に向かいます。卵巣から卵子が飛び出て排卵すると、今度は黄体化という現象がはじまります。プロゲステロン(黄体ホルモン)というホルモンが出てきて、内膜はさらに成熟し、多種の栄養を分泌します。

――いよいよ着床のための準備がととのっていくんですね。

小塙:はい。このころから、子宮内膜は分泌期に入ります。いろんな栄養分が内膜から分泌されます。
黄体化の時期に出る黄体ホルモンは、妊娠にとても重要なものです。これが分泌されることで、子宮内膜が安定しますから。一方でエストロゲンは、排卵する36時間前くらいがピークで、排卵されると同時にだんだん下がっていきます。とはいえ0にはなりません。

このあと受精卵が着床するわけですが、それは排卵後、子宮にやってくるまでに1週間かかるんですよ。まず卵管の膨大部というところで受精がおこなわれて、卵子が分割されて発達します。その後この受精卵が子宮に戻ってきて着床となるのですが、このあいだに1週間かかるんですね。このときまたエストロゲンがたくさん分泌されるようになって、ピーク時の3分の2くらいの値まで復活します。

受精卵が無事着床するのには、黄体化のときに黄体ホルモンがしっかりと分泌されていることに加え、エストロゲンもバランスよく分泌されなければいけません。どちらか一方でも欠ければ、着床するのは難しくなります。

エストロゲンが必要なときに必要な量分泌されるようにするためにも、イソフラボンは必要なんです。

――ありがとうございます。受精卵が無事着床して、妊娠できることは本当に神秘的ですね。
では、努力が実りめでたく妊娠された方に対しては、イソフラボンはいつまで摂取するように指導されていますか?

小塙:イソフラボンの着床をサポートする働きを考えて、安定期に入る8~12週目までの摂取をおすすめしています。

不妊治療の将来、ホントのところが知りたい!

――ところで、治療とは少し離れますが、運動など生活習慣についてご指導されているということでしたが、具体的にはどのようなことをおすすめされていますか?

小塙:適度な運動はとても大事です。1日3000歩は歩いてほしいですね。
このくらいなら、仕事の合間や休み時間に少し散歩するだけでも十分まかなえます。エレベーターやエスカレーターをなるべく使わず、階段を積極的にのぼるようにするといいかもしれません。

――ありがとうございます。
これまで診療されて、患者さんとのかかわりの中で最も心に残っているエピソードがあれば教えてください。それによって、お考えや行動が変わったことはありますか?

小塙:医師になって30数年、もちろん出産の知らせはうれしいですよ。でも一番心に残っているのは、残念な結果に終わった患者さんとのエピソードです。

体外受精を十数回した45歳の女性が、ある日の診察でこうおっしゃいました。

「私はもうやりつくしました。先生には言葉では言い尽くせないほどお世話になった。私のわがままで先生に無理を言ってご迷惑をかけました。本当に、ありがとうございました。
先生に治療していただいた時間は、本当に充実したものでした。これからは夫婦ふたりで仲良く生きていきます」

彼女は妊娠したくて、いろんなクリニックに行ったかもしれない。でも最後の最後、大事な時期を僕に賭けてくれたわけです。そのときは、声も出ないほど感動しましたね。

不妊治療というのは、成功率が3割程度と厳しい世界。10人の患者さんが来院されたら、2人、3人に「おめでとう」と言えたら御の字なんですよね。

裏をかえせば、7人、8人には「またがんばろうね」と言わなくちゃいけないわけですよね。「私はもうダメです」とめげそうになっている患者さんを、どうやって励ますか。私にとっても永遠の課題です。

――貴重なエピソード、ありがとうございます。小塙先生ご自身の今後の目標や展望をお聞かせください。

小塙:今、一般的な企業ならあと1年で定年という年齢にさしかかって、現場のほうは若い医師たちに任せていきたいと思っています。
その中で私ができることは、徹底的に患者さんのために、納得のいく治療の仕方を考えることかなと。

言葉は適切ではないかもしれませんが、流れ作業的に「はいダメ、はい次」という扱い方をするんじゃなくて、どんなときにも患者さんの心に寄り添い、その方が納得する対応を考える。これが僕に残された使命だと思っています。

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